「Aqua Dungeon」の開発とその効果
C言語は多くの情報工学の学生にとって重要なプログラミング言語ですが、その学習は文法やアルゴリズムの理解に時間がかかるため、初心者には難しいとされています。本研究では、学習者のモチベーションを向上させるために「ゲーミフィケーション」の手法を取り入れたC言語学習支援アプリ「Aqua Dungeon」を開発しました。
Aqua Dungeonの概要
Aqua Dungeonは、C言語の学習をサポートするモバイルアプリで、特定の授業や演習の復習・予習を目的としています。本アプリには、以下のようなゲーミフィケーション要素が組み込まれています。
- レベルシステム:問題を解くことでポイントを獲得し、レベルアップが可能。
- バッジシステム:特定の条件を達成することでバッジが獲得できる。
- ランキングシステム:他の学習者との比較ができる。
- カレンダー機能:学習の継続状況を可視化。
さらに、適応学習の手法を導入し、学習者の理解度に応じて問題の難易度を調整する仕組みも搭載されています。
実験とその結果
本研究では、Aqua Dungeonの有効性を検証するために以下の2つのケーススタディを実施しました。
ケーススタディ1:授業での使用実験
対象:京都工芸繊維大学のソフトウェア演習II受講生
期間:2023年6月15日~7月26日
結果:
* 参加者のモチベーションの向上が確認された。
* バッジやランキング要素が学習の継続を促進。
* カレンダー機能の利用率が低かったため改善の余地あり。
ケーススタディ2:A/Bテストによる比較
対象:研究室の学生(ソフトウェア演習I・II履修者)
期間:2023年12月11日~2024年1月15日
方法:ゲーミフィケーション要素の有無を比較
結果:
- ゲーミフィケーションを導入したグループの方がモチベーションが高かった。
- 特に「ランキング」と「カレンダー」が学習継続の重要な要素となった。
結論と今後の展望
Aqua Dungeonは、C言語学習におけるモチベーション維持に有効であることが確認されました。特に、
- ランキング機能が学習意欲を高める要因となる。
- バッジやレベルシステムが達成感を提供。
- 適応学習の導入により、個々の学習ペースに対応可能。
今後の課題として、
- カレンダー機能の改善(利用率向上の工夫)
- 解答の振り返り機能(間違えた箇所の確認を容易に)
- 問題の多様化(より高度なアルゴリズム問題の導入)
が挙げられます。今後は、より多くの学習者に活用されるよう、アプリの改良を進めていきます。
本研究は、プログラミング教育におけるゲーミフィケーションの可能性を示すものであり、他のプログラミング言語学習にも応用が期待されます。
研究業績
[1] 谷本 嵩晃, “ゲーミフィケーションを利用したC言語学習支援モバイルアプリケーションの開発,” 修士学位論文, 京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科, 2024年.[2] 谷本 嵩晃, 崔 恩瀞, 水野 修, “ゲーミフィケーションを用いたC言語の文法やアルゴリズムの学習支援アプリケーションCode Quiz の提案,” ソフトウェア工学の基礎研究会 FOSE2022予稿集, 29, pp. 201-202, 2022年11月.
[3] 谷本 嵩晃, “ゲーミフィケーションを使用したC言語の文法やアルゴリズムの学習支援アプリケーションの開発,” 卒業研究報告書, 京都工芸繊維大学, 2022年2月.