プログラムの視認性とは,プログラムの可読性を示す1 つの指標であり,プログラムの瞬間的な認識,つまり一目見た時の見やすさを表す度合いを指す.学生が書いたプログラムの品質と最終的なプログラムの品質には強い正の相関関係があることや,プログラムの可読性と品質にも関係があることが分かっているため,学生のプログラムの視認性を改善することで,プログラムの品質の向上が期待できる.しかし学生の場合,できるだけ早く問題を解決しようとすることが多いため,視認性まで意識できている学生は少ないと考えられる.そのため,プログラムの視認性に関係のあるメトリクスを明らかにすることで,学生がそのメトリクスに対して注意することで,プログラムの視認性の向上が見込まれる.さらに視認性が向上することで最終的なプログラムの品質の向上まで期待できる.
そこで,本研究では,プログラムの視認性の向上に貢献できるメトリクスについて,既存のフォーマッターを用いて調査する.本調査では,フォーマット後のプログラムを視認性の良いプログラムとし,フォーマッターによって訂正された行数の割合が高いプログラムほど,視認性の良くないプログラムだと仮定する.この仮定に基づいて分類した視認性の良いファイル群と視認性の悪いファイル群に対して,フォーマットルールを適切に変更したフォーマットを行うことで,目的のメトリクスを検出する.
調査の結果,インデントの不揃いの整頓,演算子の前後などの空白の整頓,ブロック文の改行のメトリクスに対して,視認性の良いファイル群と良くないファイル群の間で有意差が確認できた.特にインデントの不揃いの整頓の項目に関しては,2つのファイル群の間で大きな違いが見受けられた.この結果から,特にインデントの不揃いに対して意識がけすることで,プログラムの視認性を改善できることが明らかになった.