「ソフトウェア欠陥の約80%は,約20%のモジュールに存在する」という経験則がある.欠陥がありそうな20%のモジュールを特定できれば,それらのモジュールのレビューやテストを重点的に実施することで,ソフトウェア品質保証の効率と効果を高めることが期待される.この分野の研究は,1990年代のオブジェクト指向設計メトリクスの登場,2000年代以降のオープンソースソフトウェア開発における公開欠陥データの利用,さらには近年の統計解析ツールの高度化に伴い,分析技法として着実に進化している.一方で,実務的なソフトウェア開発データに適用する工夫からやや乖離した感があり,研究成果を実務へとフィードバックする努力が求められる.本チュートリアルでは,まず,fault-proneモジュール予測の基本的かつ具体的な分析方法を紹介し,fault-proneモジュール予測分析の典型的手順を紹介する.その上で,この分野における研究動向の変遷と,研究成果により示された知見などを,筆者らの経験を交えて紹介する.また,この分野における最新の研究事例などを紹介し,筆者らが考える同分野における今後の研究展望を紹介する.