本研究では,京都工芸繊維大学松ヶ崎キャンパスを仮想空間上に再現したKITメタバースにおいて豪雨災害による浸水を体験する水害シミュレーションシステムを開発した.体験するメディア(HMD/ディスプレイ)と視点(主観:自ら水害を体験/客観:エージェントが水害に遭うのを眺める)が防災意識に与える効果を明らかにするため,これらを要因とした4条件の被験者間計画による実験を行った.実験参加者の体験前後の防災意識アンケートの変化をベイジアン階層順序ロジスティック回帰で分析した結果,全条件で防災意識の向上が確認された.メディア間の主効果に明確な差は認められなかった一方で,主観視点は客観視点と比較して効果が大きい傾向が示された.また,主観視点においては,HMDがディスプレイよりも効果的であるという視点とメディア間の交互作用も見られた.本学周辺を対象とした防災意識は,実験参加者の自宅周辺を対象とした防災意識よりも向上しやすいことが分かった.これらの結果から,身近な場所を再現した仮想空間でHMDを用いて主観的に災害を体験することが防災意識の向上に効果的であることが示唆された.