ソフトウェア中のモジュールと呼ばれる基本単位内に 不具合が混入しているか否かを予測する研究を「Fault- prone モジュールの予測」と呼び,長年研究が続けられて きている.我々は,Fault-prone モジュール予測の一手法と してスパムフィルタリングの理論に基づいた Fault-prone モジュールの検出手法を提案し,「Fault-prone フィルタリ ング」と呼んでいる.Fault-prone フィルタリングは,ソ フトウェアのソースコードモジュールをテキスト情報と してテキスト分類器(スパムフィルタ)に入力として与 え,学習・分類することで任意のソースコードモジュール に対する不具合の混入確率を出力する.だが,この手法 では,これまでソースコードモジュール以外のモジュー ルを学習・分類に用いてこなかった.Fault-prone フィル タリングに与える入力はテキスト情報であるため,本研 究では別のテキスト情報として,静的コード解析ツール PMD の出力を入力として与えることを考える.具体的 には各ソースコードに対して PMD の出力を取得し,そ れを Fault-prone フィルタリングへの入力として与える. その結果として,各ソースコードに対する不具合の混入 確率を得ることができると期待される.本研究では実験 により,この手法の評価を行った.実験から,全体的に は従来の手法とほぼ同程度の結果が得られた.特に,提 案手法では再現率に若干の向上が見られ,精度,適合率 等に若干の低下が見られることを確認した.このことか ら,PMD の出力は Fault-prone フィルタリングに与える 入力として十分利用可能であり,また,少しでも実不具 合の網羅率を上げたいときは,従来手法よりも効果的で あることが分かった.