本研究では,World Wide Web(以下Webと呼ぶ)システムにおいて複数のセッション間で
共有すべきデータ(コンテクストデータ)を保持するための新たな機構の設計と実装を行う.
クライアントサーバシステムの構築にWebを採用する場合が増加し,現在ではそれが主流と
なりつつある.一方で,Webシステムを利用したクライアントサーバシステムでは,従来の
(Webを利用しない)クライアントサーバシステムにはなかった問題が発生し得る.その一つが,
コンテクストデータの保持である.Webシステムで用いられるHTTP(HyperText Transfer
Protocol)プロトコルはセッションレスであるため,コンテクストデータの保持ができない.
そのコンテクストデータの保持のための機構が既にいくつか提案されてきているが,
それぞれ安全性や信頼性に関する問題点を抱えている.我々はそれらの問題点を解決する
新たなコンテクストデータストア機構を設計するために,いわゆるドキュメントビューアーキ
テクチャの採用を決定した.このアーキテクチャの上で,コンテクストデータの保持のための
主要な機能を構成した.新しい機構の特徴はコンテクストデータをクライアントコンピュータの
主記憶上に保持することにある.更に,効率性の観点からコンポーネントオブジェクト技術の
導入を決定した.これによって安全性や信頼性を大幅に高めることができる.最後に,典型的な
アプリケーションを想定して,新しいコンテクストデータストア機構の有効性を示す.