ソフトウェアプロジェクトにおいてレビューを行うことは品質確保の面から
重要な作業とされている.一方でレビューには相応の工数がかかるため,コ
ストの面からはあまり長い期間レビューをすることは好ましくない.しかし,
レビューを行う効率を高くしすぎるとレビューが乱雑になり,最終的な品質
の向上があまり期待できない.そのため,レビューの効率とレビューによる
指摘密度の関係について分析し,これらが後工程での品質にどう影響を及ぼ
しているかについて調べることで,適切なレビュー効率でレビューが行われ
ているかを判定する条件を発見できると考えられる.
まずSEPGが関連性があると感じていた2つのメトリクス(レビュー効率とレビュー
指摘密度)に注目した.そして,これらのメトリクスに関連した仮説「レビュー
指摘密度がある条件を満たさないプロジェクトは,後工程での品質が悪くなる
傾向がある」を示すことを本研究の目的とする.
この仮説を検証するために,実際の企業の開発現場から収集された500件のプロ
ジェクトデータを使用して分析を行った.その結果は,レビュー効率に対して
レビュー指摘密度が大きいプロジェクトでは後工程での残存不具合数は多くな
る,というものとなった.よって,この仮説の正しさを確認できた.また,実
際の開発現場への適用法も提案した.